たかが塩焼きされど塩焼き

2021年7月17日


最近お客様が「よく焼いて下さい」と
おっしゃる方が多くいらして、お話を伺ってみますと
初めて食べられたお店の印象が
強く残ってらっしゃる方、
あちこち鮎を食べにいらして
どんどんお好みが出てらっしゃいます方などが
いらっしゃるようでございます。

当屋の料理スタッフと鮎塩焼き談義になりまして
話しをしておりましたら、出るわ、出るわ、
今はネットで色んな情報が配信されているようで
皆よく見て勉強していて、鮎を横にして焼くところも多く、
うちみたいに立てて焼いていないので、
油も水分も閉じ込めながら揚げたように焼けるようです。

反対にうちは、囲炉裏で見せながら、立てて焼くので、
油は下に向かい鮎の頭をカリカリに揚げますが、
そのままにしておくと、水分が落ちすぎ、ぱさぱさになりかねないので
長く置いておくと美味しくないと料理長も言っておりました。
良いところは、立て焼きは、水分が適度に落ち、中はふっくら
外側はパリッと、頭はカリっと、ひれはお煎餅のように
絶妙な焼き方の一つになると。

横焼きも立て焼きもどれも正解はないし、どれも成功であると。

その店、その店が、鮎の塩焼きという
究極にシンプルな調理法と真摯に向き合い、
鮎に対して最大の敬意を示すそれぞれの焼き方で
いいんではないかという心に沁みる話を
板場とすることが出来ました。

鮎の味は様々。
獲れる時期、大きさ、その時の火力の状態によっても
変わってまいります。
たかが塩焼きされど塩焼きでございます。

それぞれの店がそれぞれの焼き方と
演出と持ち味でお客様には
自店の最大に美味しい鮎を召し上がって頂こうと
努力している姿は心熱くなります。

どの塩焼きも素晴らしい。

どうかそれぞれの店のその時期の一番の
「鮎の塩焼き」を召し上がって頂き
それぞれの店の鮎の美味しさを
愉しんで頂ければ幸いでございます。

※当屋はすべてのお部屋(完全個室・全八室)
に囲炉裏がございまして
板場がお部屋に出向いて
川魚(夏は鮎、それ以外の季節は岩魚や山菜ジビエなど)
を炭火で焼けるまでの15分あまり
つきっきりでお焼きしております。